【超オススメ!!】

【著者コメント】
 女性が力を発揮できる職場への意識が進み、セクハラやパワハラが公然と問題にされるようになったことで女性や弱者の労働環境は改善されたはずですが、日本には性差に関する固定観念が厳然として残っています。

 「踊り子」は「京都・徳島編(編笠の中の顔)」と「錦糸町編(男子総合職の誤算)」の二部からなる、ユートピアとディストピアが混然となった世界を舞台にするトランスジェンダー長編エンターテインメント・サスペンス小説です。



京都・徳島編 編笠に揺れる性

 主人公は京都の大学四回生の板東鈴太郎(すずたろう)。

 失恋後遺症に苦しむ鈴太郎は夏休みに徳島の実家に帰省する。高校時代に憧れの同級生だった夏菜と再開し、夏菜に誘われて阿波踊りの連に加わる。

 夏の夜、華やかな阿波踊りの渦の中で鈴太郎は踊りに酔いしれ、魂を根底から揺さぶられる稀有な体験をする。

 最愛の人を失い京都に戻った鈴太郎は、既に関西の超一流企業への就職が内定していたが、悲しい思い出に満ちた関西から離れた所で就職したいと考えて遅まきながら就活を再開する。

 大企業の大半は応募を締め切っていたが、東京都内の上場目前の中堅企業で採用枠が残っている会社が見つかった。そこは五年前に一般職を廃止し、派遣も採用せず、全員が総合職で、女性社長が男女差別を排除し、有休消化率が業界最高レベルで、徒歩圏にある独身寮の寮費月額が二食付きで一万五千円というユートピアのような会社のようだった。

 社長面接を受けて一発内定をもらった鈴太郎は新天地で頑張ろうと決意する。



錦糸町編 男子総合職の誤算

 四月一日に心機一転入社式に臨んだ鈴太郎はそこで微妙な違和感を覚える。辞令を受け取り配属部署に行って、その違和感の正体が見えてきた。

 就職した会社が自分にとってのユートピアでは無いと気づいた鈴太郎だったが、新しい環境に慣れ、その魅力にも気づくことになる。今までの価値観が根底から揺さぶられ、恋に翻弄される主人公を襲う疾風怒濤……。