(本作品は、「人工美女の館」(byひとみ絵里さん)のファンフィクションです)


(29)
それから1週間後。
「俊恵、帰ったぞ」
「お帰りなさい、あなた」今日は髪の毛をアップにまとめた着物姿の俊恵が隆造を出迎える。

「俊恵、お前の美容整形だが、明後日に行うことにした」
「本当ですか、あなた?」
「うむ。まずは喉仏と声帯の手術をする。甲高い声となめらかなラインの首筋が手に入るぞ?」
「まあ素敵!」
「次の手術はお前の努力次第で日取りが決まっていくから頑張るんだぞ、ふふ。まあ絶世とまでは行かんだろうが、『人工美女』の最高峰を目指して励みなさい」
「人工美女」という言葉を意識的に使って俊恵の女性化指向に微妙に釘を刺す隆造。
その言葉に、やはりじぶんは人工のオンナに過ぎないのだ、と改めて感じる俊恵。だが、もはやその道の究極に向けて進むしかない身である。

「え、ええ、励みますわ。どんどん私を美しくしてちょうだい、あなた」
「よしわかった。では今夜のプレイは頑張れよ、ふふふ」
「ええ」やや引きつった笑顔で言葉を返す俊恵。内面での強烈な屈辱感から、その目は決して笑ってはいない。

今の俊恵は普段の自分を隆造の妻・大神俊恵として意識している。ほぼ完璧な女体を持ち普段の立ち居振る舞いも考え方も女性だ。しかし、その心の奥深くには自分が人工女性(元男性)である違和感、屈辱感が常にあり、結局は大神俊恵という人妻を演じている「男」であり、杉浦俊夫の人格はこころの奥深くで生きている。ストレート性向の男性なら、強制的に女体化されただけでも強烈なショックであり屈辱だが、その女体化を行った憎き敵に手も足も出ず、念入りに儀式を踏んでその敵の「妻」にされていく。しかも精神的屈辱の一方で、その肉体は意志を裏切り快感におぼれる。これほどの屈辱があるだろうか...。





2日後、俊恵は喉仏の除去と声帯の手術を受けた。術後の声帯で声を出しては危険なので、1週間の無声生活および禁欲生活が命ぜられた。
1週後、予後の確認の日。無声生活の我慢と禁欲で奇妙な体の疼きを覚えながら診察を受ける俊恵。
「俊恵、では何か声を出して見なさい」
俊恵は緊張した面持ちでこくりとうなずき、口を開いた。
「わたしは おおがみ としえ です」
俊恵の口から、メゾソプラノの高さの声が発せられた。どう聞いても女性の声である。
「おお、これは上出来だ。アルトぐらいと思っていたが」
そう言いながら、隆造は俊恵の胸元に手を入れて乳房を揉みしだく。
「あん...」思わず吐息を漏らす俊恵。以前と違い、その声は艶めかしい。
「良い声になったな、俊恵。おまえを責めて新しいアクメを聞くのが楽しみだわい」
「はい...」
「今日から解禁だぞ、俊恵。わしも我慢するのが一苦労だったわい、ふふふ」

その夜。
「あぁん、はぁ、はぁ...」
俊恵は甲高いアクメ声を漏らしながら隆造の肉棒に貫かれていた。
久しぶりに男のモノを受け入れる喜びと、意識して裏声を出す必要が無くなりセックスに集中出来る喜びで、いつも以上に体が感じる気がする。
「ふふ、思った通りだわい。オンナに近づくほどに、こやつの『肉体』は意志を裏切るようになってきたな」
満足そうに俊恵を責め立てながら、隆造はそんなことを考えていた。
「だが、望み通りの肉体改造では俊恵は『もと男』の過去を忘れ現在に生きようとしてしまうからな。あくまで『もと男』であり、わしの所有物である現実を思い知らせないといかん。次の整形では『あれ』でも施すか...」
そんな隆造の企みなど知る由もなく、快感に酔いしれる俊恵であった。
「あぁん、いく、いくぅ!」

翌日。
「あなた、私はめぐみさんには会えませんの?もう回復したようですけど」
「まだ駄目だ。おまえの美容整形がひととおり完了したらだな。おまえの変貌を見せつけることで、めぐみには夫の隆一郎に尽くすしかないと悟ってもらおうというわけだ、ふふ」
「...」俊恵は顔をひきつらせ、黙り込んでいた。
ああ、わたしだけの問題では無かったのね...。隆造に言いなりにされるわたしを見たら、めぐみは抵抗する気力を完全に失うのだわ...。めぐみ、許して...もう逃げられないの...わたしは隆造の言いなりのお人形なの...。

【続く】