(本作品は、「人工美女の館」(byひとみ絵里さん)のファンフィクションです)


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数日後。

俊恵の「花嫁修業」はだいぶ進み、特に化粧に関してはかなりのテクニックを身に付けていた。ニューハーフはその男顔の欠点を隠すよう高度なテクニックを使うが、俊恵も同様で、懸命の努力の結果、自分の顔を精いっぱい女らしく造れるようになっていた。他にも、ヘアスタイリング、ファッションコーディネート、普通の女性でもハードな着物の着付け、そして料理、手芸、生け花、裁縫などのレッスンを受け、俊恵は、現代では希少種の「専業主婦・有閑マダム」への道を歩んでいた。まあ囚われの身であるのでそれくらい嗜むものがないと時間が保たなくもあるが...。

俊恵の囚われている部屋にはテレビが有るが、普通に放送局から受けるのではなく俊恵専用に編集されたプログラムが送られてくるのを見るようにされている。本や雑誌も適宜差し入れられている。内容はもちろん「女性修業」のためのものであり、メイクのハウツーやらファッションコーディネートやらの番組を録画したものや、「風とともに去りぬ」のように如何にも女性が好む、美女が主人公のメロドラマがそのほとんどを占めている。本はファッション誌や女性向け小説がほとんどである。

しかし、ヘアカーラー姿で隆造とキスした日以来、供給されるプログラムに変化が起こった。





ビデオはそのほとんどが女性化を促すものであるが、その中に何本かニューハーフや性転換者が出演していたドラマ、妖艶な女形が華麗に立ち回る歌舞伎、有名ゲイバーのショー映像、洋画の「トッツィー」や「プリシラ」など、女装、性転換がテーマのプログラムが挿入されるようになった。ニューハーフや女装の写真集を時おり読まさせられる。修行により女らしくする技巧は確かに身に付いた俊恵だが、こういった嫌がらせにより、自分は女を演じている、いや演じさせられているのに過ぎないのだという自覚を定期的に思い起こすようにされたのだ。

実妹・瞳の安全のため、隆造の言いつけに必死に従おうとする俊恵。
花嫁修業に精進することで、人工女性である事実を忘れてしまいたい俊恵。
女らしくなることに没入して、それなりに心の平穏を得たい俊恵。
隆造の目的が杉浦俊夫の自我を完全に破壊し大神俊恵という人格で上書きしようというものであるならば、願ったり叶ったりの展開であるが、隆造の狙いはそうではない。杉浦俊夫の自我を反抗出来ないように適度に弱めた上でわざと残し、後天的に追加される大神俊恵の人格と脳内で居心地悪く同居をさせ、生涯その葛藤に苦しむように仕向けたいのだ。何とも強烈な嗜虐趣味である。

実は、肉体改造の方でも、男顔をそのままにされたり腋毛を脱毛されなかった他に重要な「仕掛け」がある。
俊恵のバストもヒップもすべて高度な整形手術のみで造られていて、性転換者には本来必須の女性ホルモンが供給されていない。このため、本来は脳にまで影響を与えるエストロゲンシャワーを俊恵は浴びることがなく、女性化は己の意思のみが頼りとなる。また、乳首に睾丸の組織を移植したのは単に「金玉潰し」の拷問用なわけではない。少量ではあるがそこから男性ホルモンが供給され、俊恵が女になろうとする意思を肉体の奥から邪魔するのである。

全身全霊を花嫁修行に込め女らしくなろうと日々を送る俊恵であるが、その修行は決して極めることが出来ないという恐ろしい真実...。

ある夜のこと。
「あ、あぁん...」甘い喘ぎ声を漏らす俊恵。
その股間では電動ディルドゥがぶーん、ぶーん、とうなっている。右手でディルドゥを持ち、左手で胸を揉みしだき、気持ち良さそうにオナニーをする俊恵の姿は、男顔、男声な部分を除けばすっかり大人のオンナが快感を求めるそれである。

【続く】