(1)
「う...ん...」長い眠りから俊夫は目を覚ました。

我に返ったその瞬間、麻酔をかけられ眠らされる間際の隆造と自分とのやりとりを思い出した。

「では仕方がない、こちらも最後の手段を取る事にする」
「何の事だ...いったい何をする気だ?」
「ふふふ、それは気がついてからのお楽しみという事にしておこう」
隆造は俊夫の腕に注射をした。途端に俊夫の意識は遠のいて行った。
「寝ている間にいい夢を見るのだな...そして、夢が覚めた時、おまえは杉浦俊夫ではなくなり、このわしに一生かしずく妻・俊恵になるのだ、はははは」

俊夫の全身に悪寒と冷や汗が走る。
「ぼ、僕は...女にされてしまったのか?」
俊夫は自分の胴体に強い違和感を感じた。胸にこれまで感じたことのない奇妙な重量感が感じられる。それから、下半身にまったく感覚がない。まだ麻酔が完全に脱けていないのであろう。

「どうやら、性転換をされてしまったらしい...畜生、隆造、『悪魔』め、なんてことを!でも、これくらいでは僕は怯まないぞ。女にされたところで僕は僕だ。いずれここを逃げて大神『悪魔』一族の真実を世に曝露してやる」

病室のドアが開き、隆造、隆一郎、洋佑が姿を現した。
俊夫は隆造と隆一郎は知っていたが洋佑は知らない。3人はベッドの上の俊夫の顔をのぞき込んだ。
「おお、目が覚めたのですね俊恵さん」真っ先に洋佑が口を開いた。

【続く】